近年、共働き世帯やDINKsの割合は目覚ましく増加しており、日本の社会構造に大きな変化をもたらしています。
厚生労働省の調査によると、2021年の共働き世帯は全体の約7割に達し、過去最高の水準となりました。この記事では、共働きの割合の推移、増加の背景、そして現状における課題、未来展望について解説します。
共働きの割合の推移と現状
総務省統計局の「家計調査」によると、共働き世帯の割合は1980年の35.2%から上昇し続け、2000年には50%を超えました。
その後も着実に上昇を続け、2021年には68.8%に達しています。この数字は、共働きの夫婦が日本の世帯全体の約7割を占めることを意味します。
共働き世帯の増加は、地域や年齢層によっても差が見られます。
共働き世帯の割合が特に高いのは、都市部や共働き夫婦の年齢層が若い世帯です。一方、農林漁業従事世帯や、60歳以上の夫婦がいる世帯では、共働き世帯の割合は低くなっています。
増加の背景:多様化するニーズと社会の変化
共働きの割合が飛躍的に増加している背景には、様々な要因が複雑に絡み合っています。
以下では、その主要な要因をいくつか挙げ、詳細に説明します。
女性の社会進出とキャリア志向の高まり
女性の高等教育率や就業率の向上は、共働き世帯増加の最も大きな要因の一つです。
1980年代以降、女性の大学進学率は飛躍的に上昇し、現在では男性の進学率を上回っています。また、女性の就業率も同様に上昇しており、特に20代から30代の女性の就業率は高水準を維持しています。
女性の社会進出とキャリア志向の高まりは、単に経済的な理由だけではありません。
自己実現や社会貢献への意識の高まり、男女平等意識の普及なども大きな影響を与えています。女性が自身の能力を発揮し、キャリアを築くことを望むようになった結果、共働きを選択する夫婦が増えているのです。
少子高齢化と社会保障制度の維持
少子高齢化の進展と人口減少は、日本の社会保障制度に大きな負担をかけています。
年金や医療制度などの維持には、より多くの労働力が必要となります。共働き世帯の増加は、夫婦双方の収入を得ることで、社会保障制度の維持に貢献することができます。
また、晩婚化や非婚化の進展、出生率の低下なども、共働きの増加を促進する要因となっています。子どもが少ない夫婦にとって、共働きは経済的な安定を確保するための重要な手段となります。
ライフスタイルの変化とワークライフバランスへの意識
ライフスタイルの変化も、共働き世帯増加の背景にあります。
核家族化や夫婦共働きの増加により、家事や育児の負担が夫婦間で分担されるようになっています。また、育児休暇制度の充実や、家事代行サービスの普及なども、共働きを容易にする環境整備に貢献しています。
さらに、近年では、ワークライフバランスへの意識の高まりも共働きの増加に影響を与えています。
仕事とプライベートの両立を重視する夫婦が増え、共働きを選択することで、限られた時間をより効率的に活用しようとする動きが見られます。
企業の働き方改革とテレワークの普及
近年、企業における働き方改革が進められており、テレワークやフレックスタイム制などの導入により、共働きがしやすい環境が整いつつあります。
特に、テレワークの普及は、場所や時間に縛られることなく仕事ができるため、育児や介護と仕事の両立を容易にし、共働きの選択肢を広げています。
共働きにおける課題と展望
共働きは夫婦双方の収入を得ることができ、経済的な安定や社会貢献、個人の成長など様々なメリットがあります。しかし一方で、家事・育児との両立や夫婦間の役割分担など、克服すべき課題も存在します。
家事・育児の負担と社会的なサポート体制
共働きにおける最大の課題は、家事・育児の負担です。
特に、子どもが小さいうちは、家事や育児に多くの時間を割く必要があり、仕事との両立が困難となる場合があります。
政府や自治体による子育て支援制度が充実していますが、十分とは言えません。保育所の待機児童問題や、長時間労働による育児との両立の難しさ、家事代行サービスの利用費用が高いなどの課題も残されています。
共働きがより一般的になるためには、家事・育児の負担を軽減するための社会的なサポート体制の更なる充実が不可欠です。
夫婦間の役割分担と意識改革
共働きが上手くいくためには、夫婦間の役割分担が重要です。
家事や育児を平等に分担し、互いに協力し合うことが求められます。しかし、従来の男女の役割分担意識が根強く残っている場合もあり、夫婦間で摩擦が生じるケースも見られます。
共働きが当たり前の社会となるためには、男女平等意識の更なる普及と、家事や育児を積極的に担う男性の増加が必要となります。
長時間労働と働き方改革
長時間労働は、共働き世帯にとって大きな負担となります。
特に、子どもが小さいうちは、残業や休日出勤が多いと、家事や育児との両立が困難になります。
近年、政府や企業による働き方改革が進められており、長時間労働の是正やフレックスタイム制などの導入により、共働きしやすい環境が整いつつあります。しかし、依然として残業が多い職場も多く、課題 remains.
多様な働き方への対応
共働き世帯には、様々な働き方のニーズがあります。
例えば、短時間勤務制度や在宅勤務制度、シニア向けの雇用制度など、多様な働き方への対応が求められます。
企業は、個々のニーズに合わせた柔軟な働き方を提供することで、優秀な人材を確保し、生産性を向上することができます。
共働きの未来展望
共働きの割合は今後も増加していくと予想されます。
社会の変化や価値観の変化に対応し、共働きがしやすい社会環境を整備していくことが重要です。
政府、企業、地域社会が協力し、以下のような取り組みを進めることで、共働きがより当たり前の社会となることが期待されます。
- 保育サービスや育児支援制度の充実
- 家事代行サービスの普及
- 働き方改革の推進
- 男女平等意識の普及
- 多様な働き方への対応
共働きは、夫婦双方のキャリア形成や個人の成長、そして社会全体の活性化にもつながる可能性を秘めています。課題を克服し、共働きのメリットを最大限に活かせる社会を目指していくことが重要です。
まとめ
共働きの割合は、日本の社会構造に大きな変化をもたらしています。
共働きには様々なメリットがありますが、課題も存在します。
共働きがより一般的になるためには、家事・育児の負担軽減、夫婦間の役割分担、長時間労働の是正、多様な働き方への対応など、様々な取り組みが必要となります。
政府、企業、地域社会が協力し、共働きがしやすい社会環境を整備していくことが重要です。共働きの未来は、私たち一人ひとりの意識改革と行動によって築かれていくと言えるでしょう。
参考:都道府県別共働き世帯割合(2021年)
全国平均:68.8%
上位10県
- 福井県:71.8%
- 山形県:71.1%
- 富山県:70.7%
- 石川県:70.3%
- 島根県:69.9%
- 新潟県:69.8%
- 長野県:69.6%
- 秋田県:69.5%
- 山梨県:69.4%
- 群馬県:69.1%
下位10県
- 東京都:49.1%
- 大阪府:44.0%
- 兵庫県:44.5%
- 北海道:44.5%
- 沖縄県:44.2%
- 奈良県:42.0%
- 福岡県:41.9%
- 香川県:41.8%
- 愛媛県:41.7%
- 宮城県:41.6%
参考情報
- 厚生労働省「就業構造基本調査」:https://www.mhlw.go.jp/toukei/itiran/roudou/roushi/kiso/15/index.html
- 総務省統計局「家計調査」:https://www.stat.go.jp/
- 株式会社アルヒ「“共働き世帯”の平均年収は730万円。都道府県別の割合と4つの増加理由」:https://www.navinavi-hoken.com/articles/household-income
- J-CASTニュース「47都道府県別に見る「世帯の状況」…「婚姻率、離婚率」と「共働き世帯」には関連性あるか?【俯瞰して見る日本(2)】」:https://rubryka.com/2024/03/11/vashi-dity-ne-budut-pomyraty-v-ukrayini-zelenskyj-zvernuvsya-do-frantsuziv-pislya-zayav-makrona/
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